イギリスのスーパーM&S「日本食レポート」おすすめ土産も紹介
イギリスの大手小売事業者M&S(マークス アンド スペンサー)は、1884年にMichael Marks(マイケル・マークス)とThomas Spencer(トマス・スペンサー)の2人によってリーズで開業。現在はアジア、中東、ヨーロッパの一部地域にも販路を拡大しています。
スーパーマーケットのイメージが強いですが、大型店舗では紳士・婦人・子供向けの衣類、家庭用品、ビューティー製品なども扱っており、ベーシックで上品なスタイルが人気です。
過去記事「スーパーマーケット人気ランキング2025 イギリス大手の特徴」でもご紹介したように、食品の質の良さが特に高評価で、「イギリススーパーマーケットランキング」では1位を獲得。
そんな「品質第一」「英国らしさ」「安心感」などが強いM&Sは、日本食品や日本製品の販売パートナー候補として検討すべき存在と言ってもいいでしょう。
実際に店舗を訪れ、どのような製品を扱っているのか、日本食品は販売されているのかを調査してみました。
※本記事内における「食品」には「食材」が含まれる場合があります
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イギリスのスーパーマーケット「M&S(マークス アンド スペンサー)」日本食レポート
イギリスでの寿司人気を窺わせる「寿司バー」
M&SにはHana Groupが運営するmai sushiという寿司バーがあります。当社は、スーパーマーケットなどに設置するグローカルなアジア料理キオスク(売店)を欧米で展開するフランス発の専門チェーン。店舗によりますが、売り場の後ろのキッチンで作ったばかりの新鮮な寿司を提供しているのが特徴です。
このような寿司バーは同じく大手スーパーマーケットのWaitroseでも見られ、イギリスでの寿司需要の高さや非日本人にとっても寿司は日常的な食べ物であるということを窺い知ることができます。
① カリフォルニアロール&サーモン
アボカドが入った海苔の裏巻きスタイルやサーモンの寿司は海外では定番
② サーモンタルタル
マグロや光り物の使用はなく、全体的にローカライズされた食べ物ばかり
③ 焼き鳥、コリアンチキン
ローカルな日本食レストランが大抵その他のアジア料理を扱っているように、ここにも韓国料理が
④ 餃子
皮がピンクの海老餃子と野菜餃子。イギリスではヴィーガンやベジタリアン用の選択肢は必須と言える
⑤ 醤油
Hana Groupオリジナルのソイソース£3.50/185ml。Kikkomanのソイソースが£3.35/250mlで販売されているのを踏まえると少し高め
⑥ 寿司作り用食材、そば、うどん
同じくHana Groupオリジナルの製品。Lidlや日系ブランドYutakaからも寿司キットが出ているように、自宅で寿司を作る人が多い様子
日系ディストリビューターなどの日本食品
日本食品輸入卸会社タザキフーズのオリジナルブランドYutaka、そして、イギリス発、本格的な日本食品とオーガニック製品を提供するClearspringの製品は、ほとんどの現地スーパーマーケットで見つけることができます。オーガニック、グルテンフリー、ヴィーガン対応と表示されたものが多く、イギリスに多いヴィーガンや健康志向の人々に人気がありそうです。
また、日本食スーパーマーケットに行かずとも近場で購入できる上に、価格も良心的なので、現地の日本人もよく購入しているようです。
① 味噌
ローカルなベーカリーで味噌入りクッキーが販売されているように、味噌=日本料理ではなくなってきている
② ドレッシング、生姜(ガリ)、味噌汁
Lidlのジャパンウィークでも多く見られた“ゆず”使用製品。モルトビネガーを使った料理やお菓子(クリスプなど)が多いように、イギリス人は酸味好き?
③ そば、うどん、寿司海苔
日本食スーパーマーケットの乾麺と比べると1/3の価格
④ キムチ
日系企業も韓国食品を扱い出している
⑤ 豆腐
現地スーパーマーケットで購入できる豆腐は大抵紙パックに入って常温で保存できるもの。約£2という低価格にも関わらず、Great Tasteアワードを受賞しているだけあって十分美味しい
⑥ その他
キューピーのヨーロッパ輸出向けマヨネーズ。海外メーカーのマヨネーズにはないコクとうま味にハマる現地の人も。日本円換算すると約900円だが売れるのだろう
日本食品に紛れていたアイルランド発White Mausu社のラー油。香港出身アイルランド育ちのCEOがローストピーナッツとアイルランド産ハチミツを加えたサンドヴィッチ用のオリジナルラー油を考案したことから創まった。M&Sは、会社の大きさに関らず品が良ければ置いてくれる印象
M&Sプライベートブランドの日本食品
M&Sが独自に企画・開発した自社ブランド製品には日本食品も見られます。特に調味料やヌードルなどは、使用方法を見ると他のアジア料理でも使用すること前提で作られているようで、日本料理のための食材というよりはアジア料理全体用として一括りにして開発された印象があります。
実際、うどんでパッタイを作ったり、バスマティライスでチャーハンを作ったりする人もいます。日本食材で海外進出する際は、日本料理以外にも使用できることを売りにするとターゲットが広がりそうです。
※日本独自の食材は少なかったので、日本料理にも代用できそうな食材も含めています
① ポン酢
餃子、寿司、包子(パオズ)用に開発されたポン酢
② カツカレーペースト
醤油とみりん配合。イギリスでは日本のカレー=カツカレー
③ 中細麺、うどん
「Straight to Wok」は手早く簡単に炒められる調理済みの麺を意味する。イギリスではうどんも炒めて食べる人が多い印象。2食入りで約£1は安い
④ ビーフン
グルテンフリー食品専用の棚があるほどグルテンフリーの選択肢が多いイギリスでは、米製品の需要が高いと思われる
⑤ ライス
ライスは大体500gの小袋で販売されており、バスマティが圧倒的に多い
⑥ パックライス
いわゆる“サトウのごはん”。日本米は見当たらず
⑦ 即席ヌードル
マレーシアのサテヌードルに中華風チリセサミヌードル。オンラインスーパーマーケットOcadoのレビューを見ると「味がない」「もう買わない」という意見が。確かに、海外のカップヌードルは日本のカップヌードルと比べると改良の余地があるクオリティーである
⑧ 寿司、おにぎり(「KANDO寿司」レンジ)
筆者が調査した2店舗にはありませんでしたが、オリジナルブランドからも寿司やおにぎりが出ています。
寿司はごまマヨネーズがかかった人参とニラのピクルス入り味噌マッシュルームロール、スパイシーなカレーマヨネーズとカリカリのフライドオニオンがかかったチキンカツロールなど、かなりローカライズされたものも。
おにぎりはスパイシーツナ入りで三角の側面にごまが塗されており、驚くほど細い海苔が巻いてありました。
レディミールの充実度No.1も日本食はほとんどない
レディミール(調理済み食品)の先駆け的存在と言われているM&S。ヴィーガン、ベジタリアン用はもちろん、様々な国の料理が楽しめるという充実ぶり。1つ£3.75のところ3つ買ったら£9などというオファーも行っています。オーブンやレンジに入れたらすぐできるレディミールは、1人暮らしの人に限らず、食事の1品としてもイギリスでは利用率が高いようです。
しかし、これだけ種類があるにも関わらず、筆者が調査した2店舗では日本食のレディミールは見つかりませんでした(店員さんにも確認済み)。後でオンラインで調べてみたところ「Crispy Katsu Chicken Curry with Rice(チキンカツカレー)」があったので、たまたま売り切れだったのかもしれません。海外で人気の日本食は寿司やカツカレーだけではないので、もう少し選択肢があっても良いように思いました。
日本食ではないですが、どのようなレディミールを扱っているか幾つかご紹介します。
① 中華
春巻き、チャーハン、
鶏肉のカシューナッツ炒め、鶏胸肉の衣揚げスイートチリソース添え。中華料理のテイクアウェイショップでも必ず扱っている人気メニュー
② タイカレー
レストランやショップのテイクアウェイと比べると1/3くらいの価格で購入できる
③ シンガポールヌードル
具がゴロゴロ入っているところもM&Sレディミールの魅力
④ ラクサ
大きな海老が入って£6
⑤ ツナパスタベイク
パスタやリゾットはレディミールの定番
⑥ ローストラム
サンデーローストの定番の1つ、イギリス料理ローストラムが手軽に食べられる
イギリス土産にもおすすめの「M&S(マークス アンド スペンサー)」プライベートブランド
イギリス在住の日本人の中には、一時帰国などで必要なお土産を調達するためにM&Sを訪れる人もいるようです。もちろん観光客にとってのお土産購入スポットとしても人気です。
中でも、「イギリスでしか買えない」「パッケージがシンプルにお洒落」「低価格の割に美味しい」という3つのポイントを抑えたスーパーマーケットのプライベートブランド製品はおすすめです。
ここからはおまけとして、日本食に関係ないですがM&Sで購入できるイギリス土産におすすめの製品をご紹介します。
① お土産に大人気のエコバッグや保冷バッグ
海外のスーパーマーケットのエコバッグはお洒落で普段使いできそうなものも。保冷バッグはお弁当バッグとしても◎
② M&Sオリジナルデザインのクッキー缶、ショートブレッド、トフィー、チョコレート
日本でいうクッキーもイギリスではビスケットと呼ばれることが多い。イギリスを代表するお菓子ショートブレッド。Walkersのより美味しいと言う人も
パッケージがイギリス土産にピッタリ
少々重いがダブルデッカー型の缶が高見え?
バターと砂糖を煮詰めて作るキャンディであるトフィーもイギリス定番のお菓子
子どもに喜ばれそう
22個入りでこの値段
ただの板チョコでもパッケージがお洒落だと十分お土産に。ばらまき用に最適
スイス産のこのシリーズは美味しいと評判。箱じゃないので潰れる心配もなし
③ パッケージがお洒落なM&Sのお菓子 ティーケーキはイギリスならでは
ビスケット生地の上にクリーム状のマシュマロを乗せてチョコでコーティングした紅茶のお供。珍しがられること間違いなし
④ M&Sオリジナルデザインの紅茶
イギリスと言えば紅茶。スーパーでも美味しい紅茶は購入可能
⑤ その他
日本にはないお菓子ライスケーキ。ポン菓子を煎餅型にしたようなもので甘いものからしょっぱいものまで様々な味がある
チョコがかかったミニバージョン
キャラメルやヨーグルトとフリーズドライストロベリーがかかったものも
どうせなら見た目が華やかなバタークリームのカップケーキも
お洒落なパッケージの調味料は料理好きな方へのお土産に
イギリスのスーパーマーケット市場ではローカライズや日本食を超えた発想がカギ
このように、M&Sには寿司や調味料、麺類を中心とする日本食品が取り揃えられていますが、特に食材は日本料理以外にも使用できるものが多く見られました。その方が、より多くの顧客の需要を満たすことができるからでしょう。
また、寿司はいわゆる日本伝統の寿司ではなく韓国のキンパ的要素が足されていたり、M&Sが最も力を入れているレディミールにおいてはアジアの一部でしかなかったりと、中華や韓国、タイなどの他のアジア料理と比べると存在感があるとは言えませんでした。
私たちが想う寿司はサーモンアボカドではなく、おにぎりの具と言えばスパイシーツナではありませんが、海外の人に気に入ってもらおうとすると日本人にとっての王道では太刀打ちできないということです。
さらに、日本料理に韓国など他国の要素がミックスされている点からは、現地市場においては日本料理というカテゴリに捉われず、国境を超えた新たな料理へと進化させる思い切った発想も必要であることを感じました。
純粋な日本食を伝えられないのは残念な気もしますが、日本食専門スーパーでも日本人顧客が多いスーパーでもないローカルなスーパーマーケットの場合は、その方が勝算の可能性が高いと言えます。
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