ペーパーレス化に見る電子書籍市場の可能性 書店等が生き残る方法は

海外のペーパーレス化事例 紙文書の電子化や業務のデジタル化は必要?」において、世界の国々ではペーパーレス化が進んでいることを述べました。気候変動への危機意識の高まり、在宅勤務の定着、デジタルインフラの進化……。これらの要因が重なり、ペーパーレス化は単なる一時的なトレンドではなく、持続的な社会的要求となりつつあります。出版業界も例外ではなく、紙の書籍から電子書籍へのシフトが加速している状況です。

この動きは日本だけでなく、イギリスを含む欧米諸国でも顕著に見られます。

特にイギリスでは、環境配慮型のビジネスが歓迎されやすく、サステナブルなプロダクトの需要が高まっています。出版業界においても、電子書籍を通じて紙の使用を減らし、物流コストとエネルギー消費を抑える動きが合理的かつ倫理的な選択として注目を集めています。

電子書籍市場の動向と可能性、電子書籍を新たな成長軸として模索する出版社や書店の取り組み、ペーパーレス化や電子書籍の台頭に負けない紙の書籍を売る書店の取り組みなどを2記事に渡ってご紹介します。

 

電子書籍が売れている?世界の電子書籍市場規模と変化する読者ニーズ

世界の電子書籍市場規模と動向、トレンド

収益の観点からの世界の電子書籍市場は、2024年に2528億米ドルと推定されており、2024年から2033年までの予測期間中に6.1%のCAGRで約40.99億米ドルの推定評価に達すると予想されています。

この市場成長を支える要因の一つとして、出版社が読者のエンゲージメントを高めるために、音声・映像・インタラクティブな要素を組み込んだ強化フォーマットの開発に取り組んでいることが挙げられます。

例えば、語学学習書におけるクイズ形式やチェック機能、ノート・マーキング機能、児童書におけるキャラクターや画像をタップすると音が鳴る・動くといったインタラクティブコンテンツの採用が進んでいます。

また、音声読み上げ機能やBGM付きコンテンツ、インタラクティブマップを搭載した歴史書のような、マルチメディアコンテンツの導入も増加傾向にあり、これまでの読書体験に没入感や娯楽性を加える工夫が見られます。

特に注目されているのが、オーディオブックの急速な普及です。Amazon AlexaやGoogle Assistantなどの音声アシスタントを通じて、家事中・通勤中・運動中など“ながら読書(リスニング)”が一般化しており、生活スタイルに合った新しい読書体験を提供しています。

さらに、人工知能(AI)の発展により、読者の好みや読書履歴に基づいたパーソナライズされたコンテンツ推薦も実現しています。これに加えて、読書体験をSNSなどで共有するソーシャルリーディングプラットフォームの人気も高まり、読書が「個人の行為」から「コミュニティとの繋がり」へと広がっています。

加えて、サブスクリプションモデル(定額読み放題)も市場拡大の一因です。読者は即時ダウンロード、フォントサイズや背景色のカスタマイズ、そしてマルチデバイスでの利用といった利便性を享受でき、多様なニーズに応じた読書が可能になっています。このようなモデルは、幅広い年齢層にわたって新たなジャンルへの興味を喚起し、市場全体の活性化に繋がっています。

地域別電子書籍市場の特徴

電子書籍の普及は、インターネットインフラが強固でスマートフォンの普及率が高い国で主に加速しているようです。

電子書籍による収益ランキング

1位 アメリカ合衆国

2位 日本

3位 中国

4位 イギリス

5位 韓国

 

電子書籍のユーザー浸透率ランキング

1位 中国

2位 アメリカ

3位 オーストリア

4位 日本

5位 アルゼンチン

 

アメリカでは、自費出版プラットフォームが発展しており、多様な作家の声が読者に届きやすい環境が整っています。

日本では、マンガ文化の影響により、テキストとビジュアルを組み合わせたインタラクティブな形式が生まれ、特に若年層から強い支持を受けています。

また、ヨーロッパ最大の電子書籍市場であるイギリスでは、紙とデジタルの読書スタイルが共存しており、厳選されたコンテンツを提供するサブスクリプション型サービスへの関心が高まっています。

電子書籍をチャンスに変える出版社・書店の戦略とは?

日本の中小出版社の中には、紙媒体の売上が伸び悩む中、既刊本の電子化によってロングテール収益(ニッチ商品を長期間販売し続けることで得られる収益)を再構築する企業が増えています。すでに編集が完了しているコンテンツを電子化・再販することで、印刷費・在庫管理費ゼロで収益を上げるモデルが注目されています。

また、翻訳付き電子書籍として海外販売を視野に入れる動きも活発です。特に英語圏での需要が見込まれる日本文化関連書籍、ビジネス書、漫画などは、ローカライズによって第2の市場を開拓する可能性を秘めています。

一方、書店では、電子書籍を完全な競合としてではなく、共存する道を模索しています。

例えば、英国の大手書店チェーンWaterstones(ウォーターストーンズ)は、Kindle(電子書籍リーダー)販売及びAmazonとのデジタル契約を発表。店舗内にデジタルエリアや無料Wi‑Fiを導入し、読書の「紙+デジタル」体験を強化しています。これは、電子書籍リーダーあるいは電子書籍を販売・展示し、物理店舗をデジタル読書への入口として活用している一例です。

また、オックスフォード大学近くなどに店舗を構える老舗書店チェーンBlackwell’s(ブラックウェルズ)は、店舗ウィンドウにQRコードを配置し、オンラインで電子プレビューを表示できるようにしています。利用者はそれをスキャンして電子書籍の一部を読むことが可能です。店舗とオンライン(電子書籍)をシームレスに連携させ、偶然の発見・出合いをデジタルを通じて拡張しています。

紙書籍の書店は、「文化体験の場」「発見の場」としての役割を担い、電子書籍は「効率的な情報取得の手段」として使い分けられるようになってきていると言えます。

電子書籍との共存を前提に、デジタルで新たな価値を創造する

ペーパーレス化が進む中で、電子書籍は単なる代替品ではなく、新たな価値を創造するメディアとして成熟しつつあります。中小企業にとっても参入コストが低く、既存資産の再活用が可能な分野であるため、工夫次第で十分な収益とブランディングが期待できます。

特にイギリス市場では、環境意識と利便性の高さが評価される電子書籍に対する抵抗感は少なく、むしろデジタルでも読みたいコンテンツかどうかという中身の質が問われる時代です。

紙とデジタル、どちらが勝つかではなく、それぞれの特性をどう活かし、読者とどう繋がるかが重要です。電子書籍を戦略的に活用することで、持続可能なビジネスモデルと、世界に広がる新たな市場の扉を開くことができるのではないでしょうか?

今後執筆予定の「ペーパーレス化に負けない!世界の書店が挑む生き残り対策事例」では、電子書籍との共存以外で生き残りをかけるユニークな書店の取り組みをご紹介します。

 

 

 

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出典:

https://www.statista.com/outlook/amo/media/books/ebooks/worldwide?currency=USD

https://www.businessresearchinsights.com/jp/market-reports/e-book-market-117774

https://chytomo.com/en/translation-trends-at-the-london-book-fair-japanese-are-overtaking-the-uk-market-translations-from-ukrainian-are-increase/

https://www.standard.co.uk/news/uk/physical-bookstore-meets-digital-ereader-waterstones-signs-kindle-deal-with-amazon-7770139.html

https://internetretailing.net/case-study-how-famous-indie-bookstore-blackwells-is-using-interactive-windows-and-qr-codes-to-sate-book-lovers-22862/

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