伝統工芸×異業種コラボ成功例 伝統工芸品のよさを生かし再生へ

息を呑むほど繊細で精巧な職人技が生み出す日本の伝統工芸品。近年、その価値や素晴らしさが世界から再注目されているのはご存知でしょうか?そのきっかけの1つは、世界的なハイブランドや人気キャラクターなど、異業種とのコラボレーションにあります。

伝統工芸と企業/ブランドとのコラボと言えば、既製品に企業/ブランド名を入れただけというノベルティパターンが多いですが、両者の強みを生かし、現代生活に溶け込むような1つの製品にしてこそ伝統工芸に新しい命を吹き込んだことになると思われます。

本記事では、そんな伝統工芸×異業種の成功事例をご紹介します。

 

 

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異業種コラボ成功例【日本編】 アパレル等のマーケティング

異業種コラボ成功例【海外編】 アパレル等のマーケティング

 

伝統工芸のよさを異業種コラボで再生させる

日本の伝統工芸品とは

日本の「伝統的工芸品」として国が認定しているものは、2024年時点で243品目 あります。「ぬりもの(漆器)」「織物」「染物」「陶磁器」「木工・竹工」「和紙」「金工」「人形・玩具」などです。

「伝統的工芸品」とは、長年に渡って受け継がれてきた技術や技法を用いる伝統工芸によって作られた工芸品のことですが、経済産業省が定めた5つの定義を満たしているなどの条件に当てはまるもののみがそれに分類されます。

異業種コラボで広がる伝統工芸品の可能性

経済産業省が定めた定義に「主として日常生活の用に供されるものであること」とあるように、日常で使用される器や道具、インテリア用品といったジャンルが伝統工芸品には見られます。

しかし、モダンなインテリアや「コスパ」のような言葉が流行する現代の人々の暮らしには馴染みにくいこともあってか、日常使いするものとして一般的には選ばれ難い存在となっています。需要がなければ仕事にもならないので、少子高齢化や技術習得コストの高さも相まって、後継者不足で技術の伝承が危うい伝統工芸品も増えています。

そこで、敢えてモダンなブランドや異なるテイストのブランド、身近なアニメやキャラクターなどとコラボすることで、現代の人々にも受け入れてもらいやすくし、付加価値で価格以上の魅力をアピールしようという動きが伝統工芸の世界でも活発化しているのです。

特に異業種とのコラボは互いに異なる販路を持つため、これまで手が届かなかった新しい市場に参入することもできますし、「異なる2つのものを結合すること」でイノベーションが起こるという経済発展理論からしても双方に大きなメリットがあると考えられます。

海外への販路開拓だけでなく、日本国内の人々に伝統工芸のよさを再認識してもらうきっかけにもなり、コストや後継者の獲得に繋がることもあるかもしれません。

伝統工芸×異業種コラボ成功例7

① 伝統工芸×アニメ|山中漆器×ガンダム

今も多くのファンがいるアニメ「機動戦士ガンダム」シリーズ。それに登場する有人操縦式の人型機動兵器モビルスーツを模したプラモデルと山中漆器の職人たちとのコラボ作品が、バンダイ主催のガンプラ国際大会「ガンプラビルダーズワールドカップ2011」に出品されました。

赤や黒の漆が塗られ、金銀の蒔絵が施されたガンダムは世界中のファンたちの心を掴み、日本の伝統工芸における技術の高さを知らしめるとともに、新たな層への認知拡大に貢献しました。

② 伝統工芸×キャラクター|木目込み人形×ポケモン

280年以上の歴史を誇る「真多呂人形」は、「日常の中で伝統工芸をもっと身近に感じて欲しい」との想いから、様々な作品とのコラボを度々展開しています。

コラボ相手は主にゲームやアニメの人気キャラクターであり、2018年に「初音ミク」、2019年以降にポケモン「ピカチュウ」、「イーブイ」、「ミニリュウ」、「ツタージャ」、2024年に「ミッフィー」の江戸木目込人形を制作しています。

3DプリンターやCADなどに頼らず、複雑なパーツもすべて手作業で造られているとのこと。花柄の和人形衣装を用いたボディが、木目込みならではの丸みとともにやさしい雰囲気を出しています。

③ 伝統工芸×企業(飲料メーカー)&クリエイター|博多織×伊藤園×アートディレクターMasatoo Hirano

2023年、株式会社J&J事業創造は、「伝統の技×現代の技・アイデア」で未来の伝統工芸の形を創造するプロジェクト「Bank of Craft」の一環として、現代のクリエイターが伝統工芸からインスピレーションを受けて考案したデザイン柄、“リ・デザイン”を活用した4つのコラボレーションを展開。

そのうちの1つが、アートディレクターMasatoo Hirano氏が手掛けた、博多織メーカー・鴛海織物工場と茶製品および清涼飲料水メーカー・伊藤園とのコラボ自動販売機です。

福岡空港の国際線旅客ターミナルビルに設置されている伊藤園の自動販売機にリ・デザインされた博多織柄をラッピングしたもので、海外からの旅行者の目にも止まりやすい場所において日本の伝統工芸をアピールしていました。

今回のコラボは伝統工芸をそのまま利用するのではなく、現代のクリエイターが職人の仕事を見学したり話を聞いたりすることで当工芸を多方面から理解し、新しいデザインとして生み出すという点が斬新です。伝統を生かしながら現代風にリ・デザインすることで若者や海外の人々にも支持されやすくなったのではないでしょうか。

④ 伝統工芸×企業(玩具メーカー)|江戸切子/箱根寄木細工/京都竹工芸/漆芸×プラレール

玩具メーカー・タカラトミーによる鉄道玩具「プラレール」は、2年後に誕生60周年を迎える2017年に「おもちゃづくりに不可欠な職人魂や繊細さを伝えていきたい」という思いから、4つの伝統工芸とコラボした鉄道を販売。

「花火」というテーマから連想された列車が各伝統工芸を用いてデザインされたもので、例えば「江戸切子」は麻の葉、六角篭目、八角篭目を組合せたデザインの夜行列車「ブルートレイン」となっています。

子どもたちに伝統工芸の素晴らしさを自然に伝えることができる上に、メーカ側からするともう遊ばなくなった大人世代にもプラレールの存在を思い出してもらえるという、双方にとってメリットのあるコラボ企画だったと言えます。

⑤ 伝統工芸×企業(時計メーカー)|土佐和紙×ザ・シチズン

電子機器メーカー・The CITIZENは、ソーラーセルを組み込んだ腕時計「エコ・ドライブ」の文字板に土佐和紙を用いた限定モデルを発売。美しく四季を切り取る日本庭園の“借景窓”に着想を得たもので、モデルによって極薄で独特の風合いを持つ「典具帖紙」と繊維を砕かず塊の状態を残した「雲龍紙」の2種類の和紙が使い分けられています。

光を透過させるという和紙の魅力を最大限に引き出したことで、文字板の中に四季の繊細な陰影の世界を閉じ込めた小宇宙が完成しました。

一見相反する伝統工芸と最先端テクノロジーですが、上手く融合させれば時代を超えて愛される唯一無二の製品を生み出すことができるのです。

⑥ 伝統工芸×アパレルブランド|輪島塗×ルイ・ヴィトン

「輪島塗」とハイブランド、ルイ・ヴィトンとのコラボで制作された小物入れ「BOITE LAQUEE WAJIMA(ボワット ラケ ワジマ)」は、雑誌『SPUR』によって、2007年の能登半島地震で被害を受けた輪島塗産地の復興支援として企画されました。

黒漆が塗られた六角形の入れ物には、ルイ・ヴィトンの象徴であるモノグラムフラワーとロゴマークが金蒔絵であしらわれ、内側は傷が付きにくい蒔地仕上げになっています。モノグラムフラワーは日本の家紋から着想を得ているそうで、日本の伝統工芸とも相性が良く、輪島塗特有の艶美がより高級感を出しています。

限定200個ということもありすぐに完売。このように、世界で最も知名度の高いブランドとのコラボ+限定という付加価値の組み合わせは、話題性を高めるのに効果的です。

⑦ 伝統工芸×園芸業界|越前焼×園芸の専門家

越前焼職人が園芸の専門家と協力し、植物の育成に適した形状やデザインを一から考えた鉢を制作。これによって、従来の陶器市場だけでなく、園芸専門店やインテリアショップでも取り扱われるようになり、園芸愛好家やプロのガーデナーからも注目されるようになったということです。

伝統的な技術が現代のニーズと融合することで、高品質かつ需要の高い用途やデザインの製品を生み出すことを可能にした事例でした。

伝統工芸×現代要素のコラボで販路拡大や海外進出を目指す

近年、若者の伝統工芸離れなどによる需要の減少や後継者不足などで伝統工芸の継承が課題となっています。しかし、今回ご紹介したように、異業種とのコラボで幅広い層から注目を集め、新たな販路開拓に繋がった成功事例はたくさんあります。

日本の生活慣習や文化的な背景とも深く関わりを持つデザイン、各地域に根ざした個性的な技法や素材が日本の財産とも言える伝統工芸。

それを工芸品という“モノ”としてだけでなく“技術”として捉え、現代のテクノロジーやクリエイターの感性などと融合することで新たな価値が生まれます。新たな収益機会の創出と伝統工芸の継承、さらなる発展を図るために異業種コラボを考えてみませんか?

 

 

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