MSC認証マークが日本で普及しない理由|サステナブルシーフードとは

海洋プラスチックごみ問題対策の一環として、レジ袋が有料化されたことは記憶に新しいですが、SDGsには「海の豊かさを守ろう」という項目があり、海の環境や生態系を守ることが目標に掲げられています。

※SDGsに関してはこちらをご覧ください。→ SDGsの意味とは?【17の目標 & ロゴと問題点】

サステナブルシーフードに世界が注目

海外の人からも魚好きというイメージを持たれている日本人ですが、2009年には肉類の消費量が魚介類を抜き、漁獲量自体は2年連続で過去最低を更新しています。

過去60年間で日本人の食生活は大きく変化してきました。1961年の日本国民一人当たりの年間魚介類消費量は50. 4kgでした。同じ年の世界の国々の年間魚介類消費量は、中国4.29kg、韓国13.19kg、EU14.55kg、米国13.02kgであったため、比較すると圧倒的に日本が多いことが分かります。

日本では減少傾向にある魚介類の消費量ですが、実は世界的に見ると過去60年間で約2倍に増加しています。特に近隣諸国の消費量の増加はめまぐるしく、1961年に4.29kgだった中国は2017年には38.017kg、13.19kgだった韓国は54.97kgとなりました。

1975年から2015年までの水産資源の状態を比べると、健全な状態の水産資源が占める割合が低下しており、枯渇の危機にあるものが増加しているのだそうです。

日本周辺の水産資源のみを見た場合でも、枯渇しているものが49%と約半分、豊富なものは17%しかありません

(数値は水産庁のWEBサイトより)

このような状況の中、持続可能な方法で魚介類を消費者まで届けるサステナブルシーフードに注目が集まっています。

海のエコラベル「MSC /ACS CoC認証マーク」とは

サステナブルシーフードとは、将来的にも魚介類を食べ続けられるように、水産資源や環境に配慮した漁業で獲られた水産物、または環境と社会への影響を最小限に抑えた養殖場で育てられた水産物を指します。

サステナブルシーフードには、海のエコラベル呼ばれるMSC /ACS CoC認証マークが付けられます。

MSC(海洋管理協議会)とASC(水産養殖管理協議会)は、持続可能な漁業や水産養殖業の普及に組むグローバルな非営利団体で、MSCは漁業、ASCは水産養殖業を管轄しています。この2つの団体がCoC認証規格を共用しているため、まとめてMSC /ACS CoC認証と呼ばれます。

MSCが2020年1月から3月にかけて実施した、世界23カ国の消費者調査では、日本のMSC認証ラベルの認知度は19%で、23カ国平均の46%には遠く及ばない結果となりました。

サステナブルシーフードという概念が普及するよりも前から、日本では決められた漁獲量を守るなど環境に配慮した漁業を続けてきたにも関わらず、MSC認証を受けていない業者が少なくありません。

MSC認証が日本で普及しない理由は?

MSC /ACS CoC認証を受けるためには、漁法や資源管理方法などの項目を点数化した審査に通過する必要があります。

日本でMSC認証の普及が遅れている原因には、認証審査に必要なデータの提出が日本の漁業者にとって、複雑な手順を踏む必要があることが挙げられます。漁獲量・魚種などのデータの保管場所は、水産庁、漁協、漁業者など、地域や漁法によってさまざまで、審査に必要なデータが一箇所にまとまっていないことが多いのです。

また、認証にかかる費用も漁業者にとって決して安いものではないため、現在の消費者の認知度が不十分な状況では、費用対効果が低いということも上げられます。

決して、日本の漁業者が環境保護やサステナブルな取り組みに無関心だからではないのです。

MSC認証が日本で普及しない(普及が遅れている)理由まとめ

・データ提出の作業が日本の漁業者には煩雑

・費用が安くはない

・日本の消費者の認知度が低い

MSC認証、今後は日本でも普及する?

現在のように消費者の認知度が低い状況が続けば、漁業者にとって認証を受けるメリットは少ないかもしれません。

しかし日本でも既に、イオングループ、生協・コープ、セブン&アイグループ、西友、マクドナルドなど、多くの大手小売チェーンでMSC /ACS CoC認証マークを付けた商品が販売されています。登録商品数も2018~2020年の2年間で約2倍に伸びました。

日本ではイオンが取り組みを強化中

日本のスーパー業界で売り上げ1位のイオンも、2010年頃からMSC /ACS CoC認証マークのある商品の販売強化を始めました。

イオンのプライベートブランドであるトップバリュのWEBサイト上には、環境への取り組みの一環としてMSC /ACS CoC認証マークについて詳しく説明されています。

社会的に影響力のある大手企業が取り組みを強化することで、日本でも認証マークが徐々に普及し、消費者の理解も高まっていくのではないでしょうか。

資源を守りながらサステナブルな漁業を

日本では普及しないと言われることが多かったMSC /ACS CoC認証ですが、現状では他国と比較して普及が遅れているだけなのかもしれません。世界平均56%の消費者が、「若干高額であっても認証ラベルのある商品を選びたい」と回答しているように、今後は日本でもそう考える消費者が増えそうです。

日本の魚介類の消費量が減ってきたとはいえ、2016年の日本の水産物の輸入金額は142億ドルで、アメリカの207億ドルに次いで世界第2位でした。このデータからは、日本人が日本産の魚介類だけを消費しているわけではないことが分かります。世界の水産物資源に関する問題は、決して遠い国の出来事ではなく、日本人の生活に大きく影響を与えるのです。また、日本は水産物資源について考える責任のある国のひとつであるとも言えます。

消費者がMSC /ACS CoC認証のある商品を購入することは、世界のサステナブルな漁業や水産養殖業に携わる人を助けます。また、消費者の理解が日本のMSC /ACS CoC認証の普及も助長します。

「海の豊かさを守ろう」という考え方を世界に広めていくのに、魚介類消費の先進国であるともいえる日本が貢献するのも悪くないのではないでしょうか。

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