多様性時代のジェンダーLGBT。日本での理解度と海外の取り組み
以前の記事「多様な性を認めるジェンダーレス社会へ。LGBT基礎知識&割合2021」では、LGBTに関する基本的な情報とグローバルな割合を書きましたが、日本ではいったいどれくらいセクシュアル・マイノリティの方が存在しているのでしょうか?LGBTへの理解度やイギリスでの取り組みとともにご紹介します。
LGBTに対する理解度、日本はどれくらい?割合2021
多国籍市場調査コンサルティング会社Ipsos(イプソス)の「LGBT+ PRIDE 2021 GLOBAL SURVEY」によると、「あなたは次のうちどれに当てはまりますか?」という問いに対し、日本の調査対象者の回答結果は以下の割合であったことが分かっています。
レズビアン / ゲイ / ホモセクシュアル 1%
バイセクシュアル 1%
パンセクシュアル / オムニセクシュアル 1%
アセクシュアル 1%
その他 3%
ヘテロセクシュアル 82%
DK / NA 12%
ヘテロセクシュアル(異性愛者)約8割に対し、ノンヘテロセクシュアルは6%と、割合が少ない順に言えば韓国(4%)、中国(5%)に続いて3番目でした(ハンガリー、ペルー、イタリア、ロシアも同率)。選択肢にセクシュアル・マイノリティの全種類があるわけではなく、LGBTQのQの人が「その他」と回答しているか「DK」と回答しているかも明らかではないため、LGBTの割合を9%と言い切ることはできません。また、カミングアウトしていない人もいるため実際はもう少し高いと考えられますが、インドや欧米と比べると日本を含むアジアはLGBTの割合が低いことが明らかです。
「次の項目について、どの程度支持しますか?」に対して支持すると答えた人の割合は、
① LGBTの人々が自分の性的指向や性同一性についてオープンであること 34%
② 公共の場で愛情を示す LGBT の人々 (キスや手を繋ぐなど) 27%
③ スポーツチームにおいてオープンなレズビアン、ゲイ、バイセクシュアルのアスリート 35%
④ TVや映画、広告におけるLGBTキャラクターの増加 23%
⑤ 雇用、教育へのアクセス、住居、社会サービスなどに関して LGBT の人々に対する差別を禁止する法律 52%
⑥ LGBTの人々の平等を積極的に推進している企業やブランド 45%
⑦ 出生時に割り当てられた性別ではなく、自分が認識する性別に基づいて競技するトランスジェンダーのアスリート 26%
でした。トップのスペインでは①73%、②64%、③73%、④50%、⑤70%、⑥63%、⑦50%、弊社のある英国は①63%、②48%、③61%、④41%、⑤68%、⑥52%、⑦24%と、全項目の平均値を比べると日本の倍ほどの支持率です。日本は調査対象国27ヶ国の中でも支持率が低い方であり、すべての項目においてグローバル平均を下回っていました。
日本ではLGBTの人々の割合が少ないことからLGBTへの認知が低いのかもしれませんが、理解を示す人々が少ないようです。しかし、LGBTの人々自体ではなく、彼らを支援する法律や企業などへの理解は他の項目と比べると高いことが分かります。企業や団体がLGBT問題解決に取り組むことによって、そういった方面から認知、そして理解へと繋げることができるのではないかと期待できます。
実際、より多くの人にLGBTを支援する運動を知ってもらい社会全体の理解促進につなげるために、JALや日本旅行などの大手企業が様々な取り組みを行っています。今後日本における理解度は高くなっていくのではないでしょうか。
※ 調査対象:27ヶ国の16-74歳の成人19,069人
LGBTに関する海外(イギリス)の取り組み事例
「LGBTトイレ問題」ジェンダー・ニュートラルなトイレについて検討
英国政府は、新しい公共の建物すべてに男女別のトイレを設置する計画を発表しましたが、この政策が2021年5月に提案されたとき、トランスジェンダーやノンバイナリーの人々のための代替案を提供していなかったため、トランスフォビアであるとして批判されてきました。トランスジェンダーの人々のほぼ半数は、言葉による虐待、脅迫、および身体的暴行の結果、公衆トイレを快適に使用できないと報告しているというデータもあるそうです。
しかし、ジェンダー・ニュートラルなトイレはプライバシーがなく、女性の安全上の懸念を引き起こしているという指摘もあります。政府からユニセックスのトイレが女性の安全に問題をもたらすというデータの発表はありませんが、男女別トイレのみでは、公衆トイレを幼い子どもと共有したい親や、子ども用のおむつ交換台にアクセスできない父親にとって不利になる可能性もあります。
そこで、政府は、スペースがある場合は別のユニセックスまたはジェンダーニュートラルなトイレを提供する必要があると指摘しており、今秋にプライバシーを最大化するためのユニセックスの自己完結型個室トイレの設計と、障害者用トイレの改善の可能性についてさらに検討する予定だということです。
※ トランスフォビア……トランスジェンダーの人々に対する否定的な感情や価値観。
出典:
LGBTについて学校がすべき対応。多様性を理解するための教育「RSE」
世界が取り組む持続可能な開発目標SDGsの「目標10:人や国の不平等をなくす」を達成するためにも、性だけでなく人種や宗教などの面においても多様性を認め合うことを私たち一人一人が実践していくべき時代となっています。そのためには、幼い頃から学校などで当たり前のように「違いを認め合うこと」を学んでおく必要があると考えられています。特に、移民の多いイギリスやオーストラリアのような国ではそのような教育への取り組みがなされているようです。
例えばイギリスでは、2000年の「Sex and Relationship Education(性と人間関係教育)」ガイドラインを見直した「Relationships Education, Relationships and Sex Education (RSE) and Health Education (人間関係の教育、人間関係と性の教育および健康教育)」が2020年9月から施工されています。このガイドラインには、「2020年9月から初等教育の全生徒に人間関係教育が義務化されます。さらに、中等教育の全生徒に人間関係と性教育 (RSE) が義務付けられ、すべての生徒に健康教育が義務付けられます。」とあり、学校でLGBTに関する内容を含めたカリキュラムを提供することが必須となりました。
多様性(LGBT)への理解がビジネスにも繋がる
電通の「LGBTQ+調査2020」によると、約9割の人が「性の多様性」を学校教育で教えるべきと回答した一方で、「教えてもらったことがある」と回答した人は僅か10.4%であったことが明らかとなっています。
日本は単一民族であるため「違い」に対して敏感なところがあるかもしれません。しかし、ビジネスにおいても、グローバルに活躍できる人材を目指したり、様々な需要に応える製品をつくったりするためには、多様性を受け入れる姿勢が必須な時代です。
企業側から見れば、そのような人材を育てるために、学校で教わらなかった世代にLGBT講座を開くなどの機会を与えることもサステナブルな社会づくりに役立つ取り組みの1つとも言えるのではないでしょうか。
出典:https://www.dentsu.co.jp/news/release/2021/0408-010364.html
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