CSRとは?日本と海外の違い|企業で取り組むサステナビリティ
CSRとは?意味をわかりやすく簡単に
CSRとは「corporate social responsibility(企業の社会的責任)」の略で、企業は従業員、消費者、投資者、環境などへ配慮し、社会貢献をするべきであるという考え方です。
CSRに似た言葉には「corporate sustainability(企業のサステナビリティ)」があります。
企業のサステナビリティとCSRの違いは?
企業のサステナビリティを達成するためには、企業として環境や人権に配慮したモノづくりや経営に取り組むことが必要になります。
一方、CSRを達成するためには、企業が自分たちの責任は何かを明確にした上で、それに向けて取り組むことが必要になります。したがって、環境や人権に配慮したモノづくりが企業の責任だと考えている場合、サステナビリティ達成の取り組みとほぼ同じになることもあります。
CSRと企業のサステナビリティの意味が混同されやすい理由は、ここにあるといえるでしょう。
CSRの取り組みでサステナビリティとあまり関係のない例を挙げるとすれば、株式会社が株主へ利益を還元することがあります。しかしながら、一般的にCSRという言葉は、企業の利益の追求とはあまり関係のない社会貢献に使われることが多いようです。
↓サステナビリティに関してはこちらもご覧ください
CSRの歴史
実はCSRという概念自体は新しいものではなく、日本では経済同友会が 1956 年にCSR決議を行ったのが始まりだと言われています。
現在のように「環境や人権への配慮」というイメージが伴うようになったのは、 1990 年代後半のことでした。アメリカで、企業が利益を追求するだけでなく法律の遵守、環境への配慮、コミュニティーへの貢献が必要だと考える動きが盛んになり、2000年代前半にCSRに関する法整備もされました。その大きな要因は、グローバル企業が増え、発展途上国の人を雇うという機会が増えたことでした。
日本では2000年代に大手企業の不祥事が大きく取り上げられたことがきっかけで、徐々にCSRの考え方が広まりました。
CSR、日本と海外の違いは?活動事例
アメリカ-アマゾンのCSR活動
アメリカのアマゾンは昨年9月に、米国内75万人以上の非正規雇用社員も含むオペレーション部門の従業員に対し、大学の授業料、書籍代、手数料を会社で負担する制度を発表しました。アマゾンの物流センターでは高卒の社員が多く働いているため、社員の学位取得の奨励が目的のようです。予算は2025年までに総額12億米ドル(約1,300億円)を見込んでおり、日本企業ではなかなか見られないCSRの取り組みであるといえます。
またそれ以外にも、小児がん患者の支援、ウクライナ支援など、アマゾンのCSR活動は多岐に渡ります。
アマゾンのCSR活動は他にも
アメリカのアマゾンの社会貢献に関するページでは、下記のような活動が紹介されています。
1. 科学、技術、工学、数学教育の支援
十分な教育を受けることが難しい環境にいる子どもたちに、コンピューターサイエンスに興味を持ってもらえる教育をするプログラム。
2.住宅支援
低所得者やその家族に助成金や低金利住宅ローンを提供、ワシントン州のアマゾンオフィス内にシェルターを建設するための寄付など。
3.食料支援
アマゾンの物流の強みを生かし、地元のフードバンクと強力してコロナ禍で困窮した家庭に向けて食料を配給。
4.災害援助
アマゾンやパートナー企業からの支援品を被災地に迅速に届ける支援。2017年以降、70以上の被災地に1500万点以上の救援物資を寄付。
5.AmazonSmileプログラム
顧客がこのプログラムを通して買い物をすることで、世界中の慈善団体に寄付が可能。2013年の立ち上げ以降、3億7700万ドル以上を寄付。
6.FBA(フィルメント・バイ・アマゾン)ドネーション・プログラム
余剰在庫や返品された商品を廃棄処分ではなく、必要としている人達に寄付するプログラム。サプライヤー向けサービスであるフルフィルメントを利用することで、自動的にこのプログラムに参加できる。
日本-ユニクロやトヨタのCSR活動
日本にもCSRに取り組んでいる企業は多く存在しています。
ユニクロは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とグローバルパートナーシップを結んで難民支援を行ったり、バングラデシュでオリジナルブランド「Grameen UNIQLO」を展開して、現地の人たちが安心して働ける環境を提供したりという活動をしています。
また、トヨタは福祉車両の制作・開発に取り組み、自由に移動できる社会を作ることに貢献しています。また、南海トラフ地震による大規模被災を想定した対策にも取り組んでおり、世界に向けた活動だけではなく、地域の人たちに向けた活動にも取り組んでいます。
CSRに対する考え方、日本と海外の大きな違いとは?
トヨタやユニクロのような大企業は別として、日本の企業のWEBサイトを開くと「環境への配慮」や「奨学金サポート」をCSRとして謳っていることが多く、どこも似たり寄ったりに見受けられます。また、中小企業のWEBサイトでは、CSRに関する記述が見当たらないことあります。一概には言えませんが、全体的に日本企業はCSRを後回しにしてしまう傾向があるようです。
また日本では、人権や貧困の問題に関しては企業の責任というより、国や自治体の責任と捉える傾向もあるようです。たしかに、これらの問題は直接的に企業の責任ではないかもしれませんが、海外の企業は責任を果たすというよりは、「社会のために良いことをしよう」という姿勢が、日本企業よりも強い印象です。
実際、アメリカやイギリスの企業のWEBサイトではCSRという言葉より、ソーシャルグッドやソーシャルインパクトという言葉を使っていることが多く、それぞれの企業の強みを生かしてユニークに社会貢献しているようです。
中小企業もCSR活動をするべき?メリットは?
中小企業の場合、トヨタやユニクロのような大規模な活動は難しいかもしれません。しかし、CSRの活動をすることによって、イメージの向上や従業員や取引先との信頼関係を築くなど、様々なメリットを得ることができます。
中小企業が取り組みやすいCSRの活動は、地域密着型であるといえます。地域の困っている人や問題に目を向けて、企業として貢献できることはないか探してみるのも良いかもしれません。
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