脱プラスチックのための代替品は?素材から環境問題対策を考える
「プラスチックの代替品はやはり紙でしょう?」。カフェやレストランでは紙製のストローが提供されるようになり、スーパーの野菜売り場ではビニル袋が紙袋にチェンジした日常からすると、こう考える人が多いのではないでしょうか?
しかし、「脱プラスチックは意味ない?環境問題対策で意識すべき事柄とは」で述べたように、ある視点から見ると紙にも環境に良くない部分があることが明らかになっています。この事実を知ると、「脱プラスチックは意味ない」と考えはじめる人も出てくると思われますが、実はプラスチックの代替素材は紙以外にもたくさんあります。中には日本ならではの素材もあるので、海外進出にも繋がるかもしれません。
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「紙袋は環境に悪い」以外にもデメリットが
紙袋の製造やリサイクル時にかかるエネルギーの多さ、輸送時も含めた二酸化炭素排出量などの問題は前回触れましたが、紙製パッケージには他にも問題があります。
紙はご存知の通り、水や湿気、紫外線に弱いため、劣化が早く、衛生面を考えても食品や医療で使われるパッケージとしては不安が残ります。小麦粉などの紙袋から害虫が侵入した話や紙製ストローで飲み物を飲んでいる時にストローがふやけて不味かったという話も聞きます。ぐちゃぐちゃになったストローの破片や色付きストローの色が飲み物に溶け出していないか心配にもなりますよね。
さらに、製造・加工が簡単で安価なプラスチックと比較すると、原材料のコストが増してしまう場合もあります。
製品によっては、紙以外の環境に良い素材が向いているということもあるのです。
では、紙以外の素材とはどのようなものがあるのか、これから見ていきましょう。
脱プラスチック取り組みのための【プラスチック代替品例・素材例】
プラスチック代替例① 寒天
ゼリーやところてんの材料に使われる寒天は食べ物のイメージがありますが、実は梱包資材に使われています。紅藻類(海藻)を原料とした寒天は、海に流されても自然分解され、土に混ぜても保水力の高い土壌になるという利点があります。害のある物質が流れ出すことはないようです。
また、フィルム状のパッケージから厚みのある緩衝材まで幅広い用途で使用でき、将来的には配送用バッグや結束バンド、ボールペン、カトラリー、歯ブラシなどの代用も期待されています。
この寒天から梱包資材などをつくる技術を開発した日本のデザインユニットAMAMは、世界中の若手クリエイターを対象とした国際デザインコンペティション「LEXUS DESIGN AWARD」でグランプリを受賞しました。
プラスチック代替例② 海藻 ―食べられるパッケージ
海藻を乾燥させて粉末状にしてから、ある処理を施してつくられた調味料パックやテイクアウト用容器(耐水性を持たせるための覆い部分に代用)などが「食べられる包装材」として話題になっています。
イギリスのスタートアップ企業Notpla(ノプラ:NOT PLAsticの意味を持つ)が随分前から開発に取り組んでいるもので、紅茶やコーヒー、洗濯洗剤を入れるサシェ状の袋の代用としても期待されています。お湯に入れると化学物質を放出すると言われるティーバッグやインスタントコーヒーのスティック状のプラスチックパッケージと違い、食べられる海藻からできた‘袋’は安全でゴミにもなりません。今流行りのキャンプや旅行などのお供としても良さそうです。
プラスチック代替例③ 竹 ―ホテルのアメニティ歯ブラシなどに
竹は歯ブラシやストロー、食器、籠、トイレットペーパーなど、幅広い製品に活用可能です。
栽培の際に人工肥料や農薬を必要とせず、伐採した切り株から新たに再生・成長するため植え直す必要がなく土壌への負担もかかりません。
日本の代表的なホテルの1つ「帝国ホテル」でも、プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律の施行を受け、客室で提供するアメニティの歯ブラシやカミソリを竹製に切り替えています。
また、アパレル企業が竹を利用した繊維で衣類を製造するなど、様々な業界から注目されている素材です。
プラスチック代替例④ 石灰
石灰石を粉砕して製造した素材を、ショッピングバッグや食品容器、アメニティ用品などに活用できます。
日本のスタートアップ企業TBMが、石灰石を原料にプラスチックや紙の代替となる素材「LIMEX」や再生素材「CirculeX」を開発しています。石油由来のプラスチックと比較すると、燃焼時のCO2を約58%排出削減することができるそうです。
さらに、石灰石の採掘・加工は容易で供給の安定性に優れ、価格が安価というメリットもあります。日本では、鉱物資源の中で国内自給率が100%を越えている唯一の資源であり、日本国内での開発・利用がスムーズに行える素材であるため、日本初の新ビジネスとしての可能性を感じさせます。
プラスチック代替例⑤ 麦わら
麦わらは茎の中が空洞で液体を通すため、ストローに適しています。元々「ストロー(straw)」は英語で「麦わら」を意味している言葉であり、昔は麦わらをそのままストローとして使用していました。
麦は非可食部である皮の部分も容器として使用されているように、無駄なく活用でき、廃棄物削減にも繋がっています。
しかし、麦わらは長さにバラつきがあったり裂けているものがあったりと、すべてを活用できるわけではありません。加工して商業利用が可能なレベルにするまでに、プラスチック製ストローの約400倍のコストがかかるとも言われており、その点が課題となっています。
プラスチック代替例⑥ バガス
バガスは、さとうきびを圧縮した後に出る搾りかすのことで、さとうきびから取った糖汁を搾り取るときに排出される茎や葉などの繊維部分を指します。
さとうきびは、世界70ヶ国以上で栽培されており、1年間で約12億トン生産されるうちの1億トンがバガスとして排出されていると言われています。排出されたバガスは、紙や衣料品の原料、ボイラー燃料、建築資材、家畜飼料などに活用されます。
「バガスペーパー」と呼ばれるバガス由来の紙は、プラスチックの代替として容器への使用が進んでいます。
プラスチック代替例⑦ セロハン
透明でプラスチック製フィルムに似ているために環境に悪いと誤解されやすいセロハンですが、実は木材から取り出した繊維であるパルプを加工して製造されています。それが、「透明な紙」とも呼ばれる由来です。あの昔からあるセロテープも天然素材が主原料です。
セロハンは塩化ビニルやポリエチレンなどの合成樹脂と比較すると、環境にやさしく生分解性に優れています。
セロハン生産を続ける日本企業のレンゴーとフタムラ化学は、2社でセロハンの世界シェアの約8割を占めるとされ、脱プラが日本企業に追い風となっています。
プラスチック代替例⑧ 木材 ―木材由来のプラスチックも注目
木は様々な形に切り出せるため、カフェなどで見かける使い捨てカトラリーや子ども用おもちゃなどに使用されています。
また、木材そのものではなく、木材セルロースが原料のプラスチックにも注目が集まっています。フィンランドのスタートアップWoodly(ウッドリー)が開発した新素材「Woodly®」がその例です。「プラスチックをプラスチックのまま、環境にやさしい素材として」という考えから生まれました。
最大の特徴はカーボンニュートラルであり、「バイオマスプラスチック」というわけです。
脱プラスチック取り組み拡大で日本企業に海外進出のチャンス?
このように、プラスチック代替は紙以外にもたくさんあることをお分かりいただけましたでしょうか?
中には、日本でずっと前から生産されている素材や日本の自然界に存在する原料もありました。それらが現代の最新技術と合わさることで改良され、世界の脱プラ、そして持続可能のために、重要な役目を果たす時が来るかもしれません。
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