イギリス上流階級の特徴 貴族とエリートの違い 称号&呼び方

イギリス上流階級の生活と特徴①【服装&食事】編」と「イギリス上流階級の生活と特徴②【アクセント 職業 スポーツ 教育】編」では、イギリスの上流階級を一括りにしてその生活に関することをご紹介しましたが、上流階級の中でも階級はあり、王族(ロイヤルファミリー)、貴族、新興エリート層に分けられます。

今回は、その中の貴族に焦点を置き、新興エリート層との違いや称号、呼び方についてご紹介します。

 

イギリス上流階級における貴族とエリートの違い

現代におけるエリートの意味

「エリート(elite)」が持つ選ばれた人々という意味からすると貴族もエリートに含まれそうですが、現代のイギリスの階級社会では、エリートを「新興エリート層」として明確に区別しています。

新興エリート層とは、「紳士の国イギリスのマナーは厳しい?③上流階級の見分け方.特徴」で述べた「現代のイギリスに見られる7つの社会階級」の「エリート(Elite)」に分類されるグループで、主に庶民階級から成功者となった人々を指します。教育水準が高く、能力やキャリアによって高収入を獲得し、自力で富を築いた人たちのことです。

かつてのイギリスでは、エリートといえば銀行家や金融関連を思い浮かべられる傾向がありました。しかし現代では、ビジネス、政治、学術、芸術、メディアなど様々な分野の人々が社会的な地位を確たるものにしようと競い合う中で、より社会的影響力を持つようになった人々をエリートと呼ぶようになっています。

伝統に基づく高尚な習慣を継続するのではなく、自身の知恵や独創性を基に何かを成し遂げる必要のあるエリートは、裕福な家庭に生まれる運以上のものが求められる点で、まさに神に選ばれた存在と言えるのではないでしょうか。

世襲貴族と一代貴族

一方、イギリスの「貴族」は、「世襲貴族(hereditary peer)」と「一代貴族(life peer)」に分けられ、前者は伝統的な教育機関出身で家柄や伝統に基づいた人脈を持ち、代々受け継がれた財産や地位によって富を形成した人々、後者は功績や社会的貢献により、国王(現在は国王の名の下に首相が推薦)から爵位を授けられた人々を指します。

つまり、伝統的な血統とは関係なく自己の努力と才能で地位を築いている点で、一代貴族は新興エリート層に近いと言えます。

一代貴族の制度は1958年の「一代貴族法(Life Peerages Act)」により正式に制度化されましたが、これは、イギリスの上流社会が「血統のみ」ではなく「個人の実力」も評価する方向へ変化した象徴とされています。学者、芸術家、実業家、政治家などの幅広い分野の功績者が加わることで、議論や立法において実務的な知見が活かされたり、上流階級出身者中心の偏りが緩和されることで、国民の多様な声が政治に反映されたり、などといったメリットをもたらしたことは言うまでもないでしょう。

一代貴族の有名人には、元首相であるサッチャー女男爵(Margaret Hilda Thatcher)や実業家のシュガー卿(Alan Michael Sugar)がいます。

イギリス貴族の特徴

イギリスの貴族社会には明確な序列と厳格な階級制度があり、爵位を保持している人物、またはその家族のみ貴族と名乗ることができます(家族も名乗れるのは世襲貴族の場合のみ)。

爵位とは、主に18~19世紀初頭にかけて、当時の各地の支配者が、それぞれの地域の有力者や功労者に授与した栄誉称号であり、貴族と見なされる世襲の爵位数は5種類あります(次項目参照)。世襲貴族は約800家ありますが、上流階級全体の割合は1%未満と、非常に稀有な存在とされています。

イギリス貴族ならではの特徴としては、広大な土地や荘園を維持している家系が多い点、「貴族院(House of Lords)」で立法に関与できる点(※)、「ロイヤル・アスコット(Royal Ascot)」や「ヘンリー・ロイヤル・レガッタ(Henley Royal Regatta)」などの社交イベントを通じて、上流社会の一員として影響力を持っている点です(フランス、イタリアなどでは、社交界の伝統は衰退傾向にあります)。

 

※1999年の改革で世襲貴族のほとんどは議席を失い、現在は一代貴族が中心

イギリス上流階級「貴族爵位の称号一覧」と呼び方 ―「サー」「ナイト」「デイム」とは?

イギリス貴族が保持する爵位の称号一覧

公爵Duke(デューク)/ 女公爵Duchess(ダッチェス)

侯爵Marquess(マーキス)/ 女侯爵Marchioness(マーシャネス)

伯爵Earl(アール)/ 女伯爵Countess(カウンテス)

子爵Viscount(ヴァイカウント)/ 女子爵Viscountess(ヴァイカウンテス)

男爵Baron(バロン)/ 女男爵Baroness(バロネス)

※これらの爵位を与えられた男性の妻も女性形と同じ

 

これら貴族の爵位は基本的に世襲され、家系ごとに引き継がれます。但し、男爵(バロン)あるいは女男爵(バロネス)は一代貴族に与えられる爵位でもあり、その場合は子孫には引き継がれません。

イギリス貴族の呼び方

公爵/女公爵

正式な呼び名:The Duke/Duchess of 地名

下の階級から呼ぶ場合:Your Grace(ユア グレース)

※3人称の際は性別を特定し、「Your」を「Her」「His」に変える

侯爵/女侯爵、伯爵/女伯爵

正式な呼び名:The Marquess/Marchioness of 地名

下の階級から呼ぶ場合:My Lord(マイ ロード)/ My Lady(マイ レイディ)

 ※Lord=卿

子爵/女子爵

正式な呼び名:The Viscount/Viscountess 姓

下の階級から呼ぶ場合:My Lord(マイ ロード)/ My Lady(マイ レイディ)

男爵/女男爵

正式な呼び名:Lord/Lady 姓

下の階級から呼ぶ場合:My Lord(マイ ロード)/ My Lady(マイ レイディ)

「ナイト」「バロネット」は貴族以外に与えられる名誉称号

貴族ではないものの、上流階級や名誉ある地位として用いられる称号もあります。それは「ナイト(Knight)」と「バロネット(Baronet)」です。

ナイトとは? ―「サー」「デイム」はナイトの敬称

ナイトとは、イギリスの叙勲制度において王室から与えられる称号で、国家レベルでその分野に多大な貢献をした人物に授与される最高の栄誉のひとつです。一代限りで貴族院への参加権限もありません。

この称号を授与されると、男性は「Sir(サー)」、女性は「Dame(デイム)」の敬称を名前の前に付けることができます。つまり、ナイトは地位そのものを指し、サーやデイムはナイトが用いる特別な呼び名ということです。

ナイトの称号を得た著名人には、ノーベル文学賞を受賞したサー・カズオ・イシグロ(Kazuo Ishiguro)、同植物学者のサー・デイビッド・アッテンボロー(David Attenborough)、ハリー・ポッターのマクゴナガル先生役で知られるデイム・マギー・スミス(Maggie Smith)がいます。

バロネットとは?

準男爵と和訳されるバロネットは、爵位の一番下位である男爵(バロン)とナイトの間の階級になります。また、ナイトと同様、貴族ではなく貴族院に議席はありませんが、ナイトと違って世襲性の名誉称号です。基本的に男性の相続人(息子)が継承します。

敬称はサーですが、ナイトと区別するために「Sir 氏名, Bt」と、Baronetの略である「Bt」を付ける場合もあります。準男爵夫人は 「Dame 氏名, Btss」あるいは「Lady 氏名, Btss」のように、サーの代わりにデイムやレイディが使用されます。「Btss」はバロネットの女性形「Baronetess(バロネテス)」 の略です。

イギリスの貴族制度はなぜ廃止されない?

かつて政治的影響力が強かった世襲貴族。彼らの貴族院での議席を減らすことでその特権を弱めたものの、イギリスの貴族制度は中世以来の伝統として根付いており、国の歴史や文化の象徴として完全に廃止しようとする動きは今のところ見られません。

貴族の家系は多くの歴史的建造物や名門学校と結びついており、観光業や文化の一部としても重要視されています。

戦後の民主化政策と平等社会の実現のために、日本では廃止された公家や華族といった貴族階級。イギリスでは貴族制度を単なる特権階級としてではなく、文化的・歴史的な価値、そしてイギリスらしさを象徴する魅力として捉える意識が国民の中にはあるのかもしれません。

 

 

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出典:

https://www.oxfordreference.com/display/10.1093/oi/authority.20110803114828726#:~:text=The%20upper%20class%20is%20a%20property%2Downing%20class%20living%20from,superior%2C%20traditionally%20grounded%20status%20privileges.

https://easysociology.com/sociology-of-inequalities/the-british-upper-class-an-outline-and-explanation/#:~:text=Wealth%20and%20Privilege%3A%20The%20British,lifestyle%20and%20access%20exclusive%20opportunities.

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