日本の文房具が海外で人気!イギリスの文房具屋でMade in Japan発見
以前の記事「日本の文房具「海外の反応」人気の理由5」では、日本の文房具への海外の反応、日本の文房具が人気の理由、海外で売れた人気商品などについて述べました。
その続編として、今回は弊社のあるイギリス・ロンドンで見つけた日本の文房具をご紹介します。日本では、文房具専門店をはじめ、百貨店、書店、ファミリー層やティーンをターゲットとしたバラエティショップ、ホームセンター、スーパーマーケット、コンビニ、ミュージアムショップ、大手ECサイトなど様々な小売店で文房具を購入することができますが、イギリスではどのようなとことで販売されているのでしょうか?また、需要がある日本の文房具はどのメーカーのどのような製品なのでしょうか?文房具でイギリス進出する際の販売パートナー(小売業者)の参考としてお役立てください。
日本の文房具メーカー/ブランド向け「ロンドンの文房具屋etc.レポート」【小売ジャンル別】
文房具専門店
① Choosing Keeping(チュージング キーピング)
カフェやショップ、マーケットなどで賑わうお洒落なエリアCovent Garden(コヴェントガーデン)にある文具・紙もの専門店。手仕事的な品質・デザイン性を重視した製品は、デザイン系のプロフェッショナルはもちろん、上質な文具を求める文房具ファンや美意識の高い大人たちを夢中にさせる。
整然と並ぶ商品の中には、浮世絵や和柄の日本製シルクスクリーンプリントなどの日本製品も
マーブリングした紙や布表紙のノート、シーリングスタンプ、イラストが活版印刷されたグリーティングカードなど量販店では見られない魅力的な商品が豊富
製本・保存修復サービスを行う部門も持つ、高級な紙・製本材料および文具を扱う老舗店。日本の糸綴じ製本や貼り箱のワークショップも開催している。
製本家、アーティスト、修復士などの専門職から紙・クラフト素材マニア、趣味でブックアートや紙もの制作をする上級者等を顧客に持つ。
紙カテゴリには日本製アート&修復ペーパーや和紙、折り紙&コラージュ、ブッククロスカテゴリには日本製リネンや日本製コットン、その他では墨汁、糊を扱っている。
③ Present & Correct(プレゼント アンド コレクト)
オリジナル文具に加え、世界18各国以上から選び抜かれた文具、オフィス小物、ヴィンテージ文具などを扱う。ブックデザイナーの2人が学生時代から楽しんできたものを展示する場所としてオープンしたそうで、メッキタイプの鉛筆キャップクロームサヤやOLFAのタッチナイフなど日本人にとって懐かしい製品もちらほら。
センスのよい雑貨・文具を探している大人やSNS映えを意識する文具好きな観光客が訪れる。
陳列の仕方にもこだわりがあり、自分だけのお気に入りを探すのに没頭してしまう。
世界中の独立系ブランドやデザイナーに作品を披露するプラットフォームを提供し、文具愛好家のコミュニティに届けられるように支援したいとの思いから創まった。新興の小さなブランドにも焦点を当て、デザインや質の良い製品、さらにサステナブルである製品を積極的にセレクトしている。
高品質な手帳・ノートを探すビジネスパーソンや海外ブランドの文具ファンに人気。
絵具、キャンバス、製図工具、アート素材などの画材を幅広く揃える専門店チェーン。デザイン性よりも実用性を意識したセレクトで学割もあることから、顧客には美大生・芸術系専門学校生や芸術教育に携わる教師層が多いことが窺われる。
日本製品では、手漉き和紙の折り紙やサクラクレパスのピグマ、ターナー色彩の絵具、ツキネコのスタンプパッドを扱っている。日本製のペン先を搭載したTom's Studioの詰め替え式ペンもあり。
② London Graphic Centre(ロンドン グラフィック センター)
Oxford Street(オックスフォードストリート)に旗艦店を持つ有名百貨店チェーン。高級ブランド・ファッション、コスメ、家具、雑貨など多岐にわたる品揃えで、高級志向のローカル層やファッション・ライフスタイル重視のミドル階級以上、海外からの観光客で賑わっている。
デザイン文具の総合メーカーMIDORIのミニ文具シリーズ
旅行にも便利なステーショナリーキット
こちらもMIDORIの製品「スタンプを彩るカラーペン」と「書くを愉しむMD色鉛筆」。独自開発した滲まず裏抜けしにくい水性顔料インキのペンと繊細で優しい色合いの鉛筆
消しゴムのカスなどの小さなゴミを集めてくれる箒収納のミニカー
デザイン製のある和風デザインのポストカードも人気
日本でも人気のリバティ・プリント生地で知られる老舗高級百貨店。アパレル、インテリア、コスメ、ギフトだけでなく文具売り場もあり、デザイン性のある筆記用具やグリーティングカード、ノート、ペーパーウェイト、リバティ柄の折り紙などが売られている。文化性・美意識を打ち出す店舗としても評価が高いだけあり、ファッション・デザインに敏感な大人、インテリアや手芸に関心のある女性、外国人観光客に人気である。
Esmieのシルクスクリーン印刷による和風糸綴じノート。イギリス製だが和風デザイン人気が窺える
カード文化で知られるイギリスらしく、グリーティングカードの需要も高い。洋風から和風まで種類が豊富
Anya Hindmarch(アニヤ・ハインドマーチ)やMarin Montagut(マラン・モンタギュー)など高級ブランドの文具関連用品も。スティックのりPrittは日本でもお馴染みだが(PLUSが販売権を持っている)、実はドイツメーカー開発の製品
その他|子ども用品店、書店、家庭用品店
① Niddle Noddle(ニードル ヌードル)
イーストロンドンCrouch End(クラウチエンド)にある子ども用品専門店。世界各国から集めた、大手小売店では見つからないようなぬくもりテイストの製品を求め、おしゃれで質の高いキッズギフトを探す人や子ども向けインディーズブランドを好む人たちが訪れる。
日本関連では、「Japanese Goodies」カテゴリを設け、ステッカーやマスキングテープ、ノート、サンリオキャラクターグッズなどを、このカテゴリ以外ではペーパーバルーン付きのグリーティングカード、スタンプ、日本理化学工業のキットパス、日本のイラストレーター、ミヤタチカの書籍を現在販売中。このショップは行くたびに違う日本製品に出会うので、買い付けの度に目利きで選んだ商品をスポット仕入れしているようだ。
② Waterstones(ウォーターストーンズ)
英国最大の書店チェーンで書棚の片隅に文具コーナーも設けている。Piccadilly Circus(ピカデリー・サーカス)にある旗艦店では1階の半分程のフロアが文具売り場になっており、文具やクラフト用品、ラッピング用品、グリーティングカード、パズルなどを取り揃えている。学生からシニアまで幅広い年齢層、作家イベントやサイン会に来るファン層が利用。
当店ではサクラクレパスや三菱鉛筆の文具、「Manga Gifts & Games」カテゴリでスタジオジブリキャラクターのノートや鉛筆などを発見
ここにもMIDORIの製品が
日本の食べ物や観光名所、柴犬など、日本独自のものをデザインしたシールもよく見られる
また、日本のメーカーのものではないが、浮世絵を模したノートや葛飾北斎デザインのペンケース、日本の芸術をテーマにしたV&A博物館制作のダイアリー、折り紙キットなどもあり、ジャポニズムデザインへの需要も一定数あるようだ。
③ Labour and Wait(レイバー アンド ウェイト)
日用品、キッチン雑貨、生活雑貨などを扱う独立系家庭用品店。ヴィンテージ品からインスピレーションを得た製品や長く使えるようにデザインされたシンプルなものに限定してセレクトされており、実用品志向のミニマリスト層、工芸・手仕事・質感を重視する30-50代の男女、ヒップスター、デザイン・ライフスタイル系感度が高い層から支持されている。
文具コーナーではトラスコ中山の定規、エヌティーのNTカッターナイフ、メタルクリップ、テープディスペンサーなどの日本製品を販売。東京(神宮前)にも店舗を持っていることもあり、全体的に日本製品が多い。
「海外で喜ばれる日本のお土産」でもある文房具
このようにロンドンでは、文房具専門店に限らず、こじんまりとした独立系ショップから大手百貨店まで、さまざまな小売店で日本製文具が取り扱われていました。
特に、大手チェーンの小売店では、デザイン性よりも実用性を重視する顧客が多いため、三菱鉛筆、コクヨ、サクラクレパスといった、日本でも広く知られる大手メーカーの製品が中心に取り扱われている印象を受けました。
一方、店主のこだわりや独自のコンセプトを持つ独立系小売店では、日本人でもあまり馴染みのないニッチなメーカーの製品がセレクトされている傾向が見られました。
また、三菱鉛筆のように現地法人を持つ企業は、ロジスティクスや商流の面で優位性があり、イギリス市場におけるシェア拡大や小売店との取引がスムーズに進めやすいという背景もあると考えられます。
「海外で喜ばれる日本のお土産」や「外国人が喜ぶ日本のお土産」とも言われている日本製文房具は、機能性、品質、デザインの三拍子が揃っていることもあり、海外の文具ファンやプロフェッショナルから高い評価を受けています。単なる「道具」ではなく、使う楽しさや、持つ喜びまで提供できる文化的プロダクトとして、グローバル市場でも独自の地位を築きつつあります。
現在、日本でしか買えない文房具の中にも魅力的な製品はたくさんあります。それは海外の文房具ファンたちにとって貴重な存在であり、「日本ならではのストーリー」や「使い方の提案」をセットにして海外へ届けることで、思わぬニーズや市場の広がりを生むことが期待できるのではないでしょうか。
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