リターナブル容器は普及しない?国内・海外の対策事例&問題点
一昔前は、牛乳もコーラもビールも瓶で提供されていました。牛乳屋さんが瓶に入った牛乳を配達してくれて、飲み終ったら瓶を回収にきてくれるというシステムを家庭で取り入れていたという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
それがいつの間にか、その時代を生きた人々の記憶の中の光景となり、ただ懐かしく語られる、あるいはアミューズメントとして敢えて再現されるものとなってしまいました。今、一般家庭で見られる飲料容器の多くはペットボトルであり、使用後に回収されるガラス製のものは、飲食店や酒屋のような大口注文をする小売店ぐらいでしか見かけなくなっています。
しかし、近年のプラスチックが及ぼす環境・生態系問題や持続可能性への取り組みの活性化が影響し、昔の牛乳瓶のような回収システムが、今後広範囲で復活するのではと考えられています。
そのような、回収されて再度使用される容器は「リターナブル容器」と呼ばれています。
この記事では、リターナブル容器についての詳細や、それを普及させるための取り組み事例をご紹介します。
「リターナブル容器」とは?意味や「リユース」「ワンウェイ」容器との違い
リユース容器との違いは?
リターナブル容器とは、使用後に回収し、再び中身を詰めて商品化される容器で、設計上では20回程度使用できるとされています。小売店や自治体の回収場所から回収されたリターナブル容器は、中身を詰める前に専門業者によって洗浄・殺菌されているため、衛生的にも問題ありません。
リユース容器も形状を変えずに再利用される容器であるため、リターナブル容器のことをリユース容器と呼ぶ場合もあり、2つの間の境界線は曖昧になっています。
この2語は英語から来ているため、英語の意味を見てみると違いが分かりやすいです。
◆リユース(動:reuse)……何かを再び使用するために再利用する
◆リターナブル(形:returnable)……①一定期間後に返却可能、または返却しなければならないもの ②ショップに返却して再度使用することができる(ボトル、あるいは容器)
このように、リユースは一般的な再利用を意味していますが、リターナブルは、再利用するために使用済みのものを「返却できる」という意味が含まれている点が明確な違いとなります。
しかし、「一度使用したものを再び使用する」という点では同じであるため、現状ではリターナブル容器とリユース容器の区別が曖昧になっていると考えられます。
▼飲食店などで蒸留酒をボトルやグラスに注ぐための容器をリターナブルにしている事例を紹介しています。
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ワンウェイ容器との違いは?
ワンウェイ容器とは、「1回使いの、使い切りの」容器、すなわち使用後に回収し、別の形状で使用される容器のことです。具体的には、スチール缶、アルミ缶、紙パック、ペットボトル、ガラス瓶などが該当します。
これらはリサイクルが可能です。例えば、ペットボトルは資源ごみとして回収されたあと、異物を完全に除去したフレークやペレットという粒状の資源にされ、再度ペットボトルとして生まれ変わります。また、衣類やカーペット、商品用パウチ、卵のパックなど、他にも様々なものに再生されています。
リターナブル容器普及のための対策事例
① デポジット返還システム、リバース自動販売機の設置
消費者が飲料ボトルなどの容器を指定の回収場所や購入店舗に返却すると、商品に予め上乗せされていたデポジットが返金されるというシステムは、法律で制度化されていないものも含めると、世界各国で既に導入されており、一般的な対策事例です。
ドイツの事例
特に、環境対策が進んでいるドイツでは20年以上も前から行われています。リターナブル(リユース)容器よりもワンウェイ容器の方が高デポジットで、環境に負担がかかるものほどデポジットが高く設定されているようです。容器のサイズによってもデポジット額が違います。
このシステムの効率化を常に続ける中で、容器を挿入すると自動的にバーコードが読み取られてクーポンが発行されるリバース自動販売機も導入しました。この試みは成功し、ドイツのペットボトルの回収率とリサイクル率は98.5%まで上昇し、世界最高となっています。
イギリスの事例
弊社のあるイギリスはどうでしょうか。2020年の使い捨てプラスチック製ストローなどの供給禁止にはじまり、2022年にはプラスチック包装税制度の施行、そして2023年にはプラスチック製の使い捨て容器やカトラリーなどの禁止措置を導入(スコットランドとウェールズでは2021年導入)と、環境対策が進んでいる印象のイギリスですが、容器のデポジット返還制度は未導入で、2025年10月に導入されることになっています(2024年の導入が延期、スコットランドは8月に導入予定)。
このデポジット返還制度(DRS:Deposit Return Scheme)は、ペットボトルや飲料缶、瓶を対象としており、リバース自動販売機が返却ポイントに設置される予定です。返却ポイントを主催するのは、この制度の対象となる飲料を販売する小売業者です。
英国の消費者は、毎年、推定約140億本のプラスチック製飲料ボトルと90億本の飲料缶を消費しており、その多くはポイ捨てされるか埋め立てられています。しかし、この制度を導入することで、リターナブル飲料容器の 85%以上を回収する目標が達成できるのではと期待されています。
② リユースプラットフォームLoop(ループ)
※リユースプラットフォームとありますが、リターナブル容器も含まれているため挙げています。
リターナブル瓶などをイオンで回収
「捨てるという概念を捨てる」というミッションで、様々なメーカーや小売店と提携し、再利用可能な容器での販売を普及させるためのリユースプラットフォーム。2019年開催の世界経済フォーラムで発表され、 現在は米国、英国、フランス、日本の各地で展開されています。日本では、イオンと2つのサステナブル系セレクトショップが参加しています。
参加小売店は、Loopと協業しているメーカーの再利用可能な容器でできた商品を購入。それを購入して使用した消費者は、容器の二次元バーコードをLoopアプリでスキャンし、容器を返却ボックスへ返却する。すると、アプリを通して容器代が戻ってくるという仕組みになっています。容器は回収され、洗浄後に中身が補填されるため、ごみにはなりません。
Loopは、使い捨て容器の代替となる耐久性に優れた容器をコカ・コーラやキッコーマン、ロッテ、パンテーンなど、世界中の大手メーカーと開発しているため、再利用可能な容器の製品は幅広いカテゴリに渡っています。
先にも挙げたように、デポジットシステムは他でも行われていますが、小売店などの既存購入チャネルを通じて再利用可能な商品を流通させることから始めている点がLoopならではの特徴と言えるでしょう。
リターナブル容器は普及しない?理由と課題
日本では、リユースやワンウェイ容器と比べてもリターナブル容器の普及はそれほど広がっていません。スーパーマーケットなどで販売されている、あるいは一般家庭で消費される飲料容器を見てもそれは明らかです。
なぜ普及しないのか?ではなく、過去に普及していたリターナブル容器がなぜ普及規模を縮小していったのかを考えてみると、以下のような理由が考えられます。
① 面倒な返却が不要で、軽くて割れないワンウェイ容器(缶やペットボトルなど)の利便性が消費者に受け入れられた。
② スーパーマーケットやコンビニによる広域流通システムがワンウェイ容器によって可能になった反面、地域に根ざした中小メーカーや酒屋のような小売店の淘汰が進み、かつては機能していた容器の回収と再使用の仕組みが衰退した。
③ サプライチェーンの再設計、リターナブル容器の回収・再使用という費用対効果の高い返却プロセスの構築が企業にとってリスキーである。
これらの問題点から分かることは、消費者のリターナブル容器への認識や環境保護への意識を上げると同時に、日常的に参加できる便利でシンプルな返却システムをつくる必要があるということです。企業側から見ると、消費者が参加するかも分からないシステムに高いコストと時間をかけるのにはリスクがあります。
しかし、欧州ではデポジット返還制度が消費者の生活の一部になっており、実際にドイツ、フィンランド、ノルウェーではリサイクル率が90%を超えるという結果が出ています。
イギリスでは、レジ袋の有料化によって全国的なレジ袋の使用量が85%も減少しました。
お金が絡むと人は動くということではないでしょうか。もちろん全員ではありませんが、容器を捨てることがお金を捨てることとなれば、たとえ少額でもお金を無駄にしたくないという心理が働く人が大半だと思われます。
近い将来、日本でもリバース自動販売機の設置が制度化され、リターナブル容器が再び普及する時が来るでしょう。
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出典:
Oxford Learner's Dictionaries | https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/
https://www.gov.uk/government/news/deposit-return-scheme-for-drinks-containers-moves-a-step-closer#:~:text=The%20UK%20Government%20will%20work,favour%20of%20the%20new%20system.
https://www.thisiseco.co.uk/news/should-the-uk-introduce-a-bottle-deposit-scheme/
参考:
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.nta.go.jp/taxes/sake/risaikuru/returnable/pdf/05.pdf