海外進出した日本語(外行語)に見る「海外の反応」「人気の日本文化」

「Sushi」「Ramen」など、日本語をそのままローマ字にした言葉を海外で発見し、驚いたり嬉しくなったりしたことはありませんか? 弊社のあるイギリスでも、そのような海外進出した日本語をよく見かけるようになりました。

製品やサービスそのものだけでなく、その呼称までもが日本語のまま海外進出している事実は、それらが日本独自のものとして尊ばれ、価値ある文化資産として認められている証でもあり、喜ばしい限りです。

この記事では、主に英語圏やアジア圏で近年使われるようになった“外行語”をまとめました。現代の外国人の心を掴む日本文化とはどのようなものか、製品づくりなどの参考になれば幸いです。

「外行語」とは

「外行語」とは「外来語」の反対で、自国の言語から他国の言語に取り入れられ、そのまま使われるようになった言葉を指します。英語では 「Japanese loanwords(日本語由来の外来語)」、あるいは「借用語(borrowed words)」「輸入語(imported words)」などと呼ばれています。

例えば、「もったいない」のように翻訳し難い感覚や価値観が含まれる言葉、「かわいい」「おもてなし」のように日本独自のスタイルを表す言葉、「生きがい」のように単なる単語以上に日本人の考え方や生き方そのものを表す言葉、以上が海外でもそのまま定着する傾向にあります。これらは、多言語にすると長くなりすぎたり意味が薄れてしまったりするからです。

 

それでは、最近とくに海外で話題・定着している日本語をジャンル別にご紹介します。

 

“日本文化人気”を感じる「外行語(日本語由来の外来語)」例一覧

外行語例① 食文化に関する言葉

Onigiri(おにぎり)

英語圏では「ライスボール(Rice ball)」とも呼ばれるが、「Onigiri」の方が一般的になりつつある。コンビニ文化とともに海外でも急速に普及しつつあり、アメリカやロンドン、パリなどで専門店が増加している。「Omusubi」と呼ばれることも。

Bento / Bento box(弁当)

フランスでは2010年頃からアニメを通して広まっているが、まだまだ知らない外国人も多い。イギリスでは仕切りのあるお重におかずやご飯を乗せて提供する店内メニューもBentoと名付けたり、ボックスに詰めたご飯の上におかずを乗せたものもBentoとして販売したりする非日系飲食店がある。

ランチは飲み物とサンドヴィッチが定番の外国人にとって、栄養バランスや彩りの良さが魅力な弁当は人気なようだ。

Karaage(唐揚げ)

外国人に振る舞ったら大好評だったというエピソードをよく聞く唐揚げ。いわゆるフライドチキンとは全く違うという意見も。

イギリスの日系ベーカリーでは、唐揚げが乗ったデニッシュのようなローカライズメニューを提供しているところもある。

Yakitori(焼き鳥)

欧州ではサテと呼ばれる東南アジア諸国の焼き鳥も食べられるが、日本の焼き鳥も居酒屋文化とともに人気上昇中。健康志向で脂の少ない鶏肉の需要が高まっていることや、海外では使わない部位も使用される日本の焼き鳥は新鮮でワインにも合うと注目されている。

Tamagoyaki(卵焼き)

「ジャパニーズ・オムレツ(Japanese omelet)」とも呼ばれるだし巻き卵。寿司の具材や弁当の一部として浸透し、ロール状の見た目が美しく日本ならではの繊細さと評価されている。

Tsukemen(つけ麺)

ラーメンの一種として紹介され、食べ方が新鮮と評判。味が濃い食べ物好きな欧米人にはスープ麺より好まれている。

Katsu sando(カツサンド)

厚みのある肉にパン粉を塗したジューシーなカツは、カレーの一部として既に海外では確固たる地位を築いてはいたが、サンドヴィッチの具としても人気が出てきており、特にスペインでブームが巻き起こっている。

欧州の他の国でも、高級レストランや非日系カフェでメニューとして取り入れられている。

Ponzu(ポン酢)

酸味のある万能ダレとして認知拡大。イギリスの大手スーパーマーケットのプライベートブランドからもPonzuという名前のまま発売されている。

Shiso(紫蘇)

「ジャパニーズ・バジル(Japanese basil)」「ジャパニーズ・ハーブ(Japanese herb)」とも呼ばれ、非日系飲食店でも使用され始めている。

しかし、一般的には日本食品専門店や健康食品専門店、園芸ショップなどの限られたところでしか入手できないのが現状。

Yuzu(柚子)

フルーツとしても調味料(Yuzu kosho)としても、香りや酸味が欧米の料理界やカクテル業界で注目されている。

イギリスの某スーパーマーケットで行われた日本食品習慣では、柚子を使用した現地メーカーのリキュールやスイーツが見られた。

Matcha(抹茶)

ヘルシー・スーパーフードとして定番化。非日系のベーカリーやカフェでも抹茶を使ったスイーツや抹茶ラテが提供されている。

Mochi(餅)

もちもち食感がブームに。大手スーパーマーケットで販売されている「餅アイスクリーム(mochi ice cream)」で広まる。

Anko(あんこ)

和菓子素材としてじわじわ浸透。ヴィーガン需要にもマッチ。

Dorayaki(どら焼き)

アニメ『ドラえもん(Doraemon)』と共に知名度アップ。海外製造もあり。

Izakaya(居酒屋)

タパス感覚で楽しめる日本式バルとして海外都市に増加。

昨年サウジアラビアにできたドイツ人オーナーによる高級居酒屋レストランなど、欧州以外の国でも人気が出ている。

Kaiseki(懐石)

ミシュランレストランなどで使われる格式ある表現。

Omakase(おまかせ)

「シェフのおまかせコース」という意味でそのまま使われる。

特に大都市のミシュランレストランや隠れ家的なレストランのメニューとして定番となっており、おまかせを注文することが“クール”という風潮ができている。

Teishoku(定食)

セットメニューの形として理解され始めている。

 

以上のような食に関する言葉は、食品ブランドのグローバル展開やSNS(主にTikTok、Instagram)でのタグ文化による拡散、日本のアニメによって広まったと考えられています。

外行語例② アニメ

Senpai(先輩)

日本の学園ものアニメにおいて、後輩の生徒が憧れの先輩に恋心を抱いても気づいてもらえないというプロットがお約束となっていることから、「Notice me(気付いて)」と合わせて「Notice me, Senpai(気付いて先輩)」という独特のニュアンスで使用される言葉として定着。

つまり、いわゆる年上の生徒という意味に「私の気持ちに気づいてくれない人」という意味が追加された“ミーム化言葉”と言える。

Tsundere(ツンデレ)

性格属性として日常英会話でもジョーク的に使用される。オタク文化を超えてライト層にも浸透中。「hot and cold」や「aloof yet affectionate」といった表現も。

Jujutsu(呪術)

『呪術廻戦(Jujutsu Kaisen)』の影響で再定着。

 

近年では『鬼滅の刃(Demon Slayer)』『推しの子(Oshi No Ko)』『ブルーロック(BLUELOCK)』などのアニメも海外でブームとなっており、それらで使用されている言葉が今後も広まっていくかもしれません。

外行語例③ 伝統文化・工芸、美意識に関する言葉

Kintsugi(金継ぎ)

海外では「Broken is beautiful.」や「Beauty in the Broken」というキャッチとともに紹介される。欠けや傷を美として捉え、壊れたものに美を見出す哲学は、現代の課題にも解決のヒントを与えてくれると評価され、メンタルヘルスやスローライフ文脈でも登場。

アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリアなどでは金継レッスンが非常に人気である。

Wabi-sabi(侘び寂び)

不完全・不均整、儚さに美を見出す日本独特の美意識としてアート、デザイン、建築に影響を与えている。

フラワー文化が根付くイギリスではこの美学の代表でもある生け花も人気だが、花を選び、配置を考える創造的プロセスに没頭することで、マインドフルネスに似た効果を得られるとメンタルヘルス分野からも注目されている。

Origami(折り紙)

子どもの遊びから教育現場、現代アートまで分野を超えて導入。例えば、アパレルブランドが布を立体的にしたり宇宙工学が探査機を設計したりする時にその構造を応用しているように、紙を折って楽しむだけではない驚くべき活用の仕方がされている。

Zen(禅)

仏教から来た言葉だが、「ミニマリズム」や「心の静けさ」として広く定着。メンタルヘルスブームの欧米では瞑想ができるカフェ“禅カフェ”の需要が高まるのではと言われている。

Furoshiki(風呂敷)

1枚の布が様々な形に変わり、意外な用途で役立つ光景が新鮮で興味を持たれている。サステナブル意識の高い国ではエコバッグの代替品としても注目されている。

Shibui(渋い)

「控えめな洗練」「静かな格好良さ」として好評。

Iki(粋)

お洒落、さりげない格好良さを表す言葉として、江戸文化からの“粋な人”としてのライフスタイルが再評価。

Mingei(民藝)

大量生産されたものでもなく、有名デザイナーによるブランドものでもない、暮らしの中にある美を表す言葉として欧米の手工芸ブームと連動。

イギリスでは日本の民藝に特化した英国史上最大の展示会「Art Without Heroes Mingei(民藝:ヒーローのいないアート)」が昨年開催された。

 

これらの日本独自の美意識や伝統文化、そこから派生した哲学、概念、ライフスタイルに関する言葉は、「日本らしさ」や「ミニマリズム」「精神性」を象徴するキーワードとして海外でも存在感を発揮しています。

外行語例④ 哲学・ライフスタイル・考え方

Ikigai(生きがい)

アメリカ、フランス、ドイツ、イギリスなどにおいて自己啓発の分野で使用。TEDトークや自己分析ワークでも活用されている。

沖縄のライフスタイルとともに「長寿の秘訣」として紹介されることも多い。

Kaizen(改善)

トヨタ生産方式で知られるビジネス用語で、継続的な改善を重視する考え方としてアメリカ、ドイツ、イギリスなどの企業文化にも浸透。

Shinrin-yoku(森林浴)

森林の中で過ごすことで心身の健康を促進する方法として、アメリカ、ドイツ、カナダなどのウェルネス業界で流行中。

Hikikomori(引きこもり)             

日本発の社会現象としてアメリカ、フランス、イギリスなどでも研究対象に。

Tsundoku(積ん読)

「購入したけど読んでない本が積まれていく現象」がアメリカ、イギリス、カナダなどで話題に。

Ma(間)

空白・余白・余韻の美学、建築・音楽・時間感覚として取り入れられる。

Gaman(我慢)

日本人の精神性として紹介される。

Omoiyari(思いやり)

共感とケアの文化として好意的に受け取られている。

Zanshin(残心)

禅や武道において用いられる言葉で、技を終えた後、力を緩め寛ぎながらも注意を払っている状態を示す。

精神集中と余韻、自身の能力と意識を絶えず伸ばし続ける「自己マスタリー」の象徴として引用される。

 

以上の日本語は、「ミニマリズム」「マインドフルネス」「サステナブル」といった世界的潮流に共鳴することで更に広まっています。

海外でも通じる日本語の増加は日本文化が愛されている証

このように、日本語は食だけでなくアニメや映画、アート、ライフスタイルなどを通しても興味を持たれ、単なる語彙としてだけでなく、文化や価値観を象徴するものとして海外で広く受け入れられています。

特に、日本文化の持つ独特の静けさ、丁寧さ、自然との共生は現代の喧騒からの逃避や癒しと結びつきやすく、そのような分野に関する日本語の浸透が顕著です。

また、漢字や平仮名をファッションのデザインとして取り入れるブランドやタトゥーとして入れる外国人がいるように、日本語の見た目をかっこいいと感じる人もいるようです。

最近では、日本のカルチャーを紹介するインフルエンサーのSNSやVlogを通して、新しい日本語がグローバル規模で流行しやすい環境にあります。

製品やサービスとともに新たな日本語を流行させ、日本文化をもっと広めてみませんか?

 

 

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